ゆめと因紅の三原色

プラレールの改造とたまに日常と小説

東方幻実伝:プロローグ

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これは夢だろう

急に何を言いだすかって?

そしてなぜそう言い切れるかって?

 


なら説明しよう

まず、俺は生まれつき目が悪い。

強いて言えば視力が低いのだ。

それがどうだろう普段愛用している眼鏡の度が強すぎて思わず外してポケットにしまう程度には視力が良くなっていた。

おかげで起き上がって周囲の状況が嫌というほど見渡せた。

 


外はビルが崩れ落ちて空も薄暗い

まるで世紀末だ

そしてここは卒業したはずの高校の教室だ

思い出深い机や椅子は無残に破壊されてたり、

窓ガラスは割れて、辺り一面には…血だろう、うん血だな

それがぶちまけられていなければ、思い出の中にある教室。

 


そして記憶を辿る限り友人達は大学行ったり

就職が決まって働いていたり、

それぞれの道を進んでたはずで

 


少なくとも目の前で血だまりで倒れてるのはありえない光景だった。

 


「なんだよ…これ…」

 


夢だからって分かっていても気分のいいものではない。

とりあえず外に出ようと廊下に出ようとしたところで丁度自分の起き上がった位置に何かが天井を突き破って落ちてきた。

 


「うっ………がぁっ……」

「……っ!?オイ!」

 


土煙が晴れて落ちてきたのは金髪の女の子だった。

どこか見覚えのあるような気はしたが、すぐに頭の隅に追いやってその子が生きている事を願いつつ近寄って抱き起こした。

これ以上死体を見続けるのも気分的には最悪だったし、何より夢にしてはだんだん現実味が帯びてきていた。

 


「!?………ァイgゴホッゴホッ」

「オイ、大丈夫か!?しっかりしろ!!」

 


彼女は俺を見るなり驚いた顔をしたがすぐに咳き込んでしまう

よかったまだ生きてる。

 


「…喋れるなら教えてくれ、これは夢か?こんな悪夢、現実だってならたまったもんじゃない」

「………安心して、アナタに…とって…これは悪夢ゴホッゴホッ」

「悪い、やっぱ無理にしゃべるな」

「大丈夫…喋れるくらいには、回復できたから」

 


俺の質問に彼女は綺麗な紅い瞳をまるで母親が子供を安心させるような笑顔を向けながら答えていた。

だが、表情とは真逆にまだ少女と呼べるような体格で返り血なのか自分の血なのかそれとも両方か……とにかく酷い有様だった。

俺が彼女の身体に痛ましい表情をしていると彼女は俺に何かを手に握らせてきた。

それには綺麗な赤い宝石に首から下げられるぐらいの長い布製の紐が繋がっていた。

 


「これは悪夢でもあり、現実でもあるの…。そしてそれは御守りみたいな……ッ!伏せて!!」

「のわっ!」

 


彼女が起き上がろうとしたところで急に押し倒され、自分たちの頭上を何かが降り注ぐが

光の壁がソレを防いでいた。

ふと横を見れば彼女がしゃがみながら手を上げている。

守ってくれているのか…?そんなボロボロになってまで…

 

 

 

「お願い、アナタの世界はこんな悲しい結末にならないで、只の押し付けだってわかってるけどこんな結末しか迎えられない世界は嫌なの」

「一体何を…」

 


言ってるんだ、と言葉を続けようと彼女を見れば…泣いていた。

 


「もうこの世界は保たない。後はアナタを正しい世界に送って私がこの世界を根本から破壊するだけ…大丈夫、今の私は全てを理解っているからちゃんと送り届けることができるわ」

 


気がつけば彼女は泣きながら俺の手を握っていた。

 


涙が彼女の頬を伝って俺の手に落ちた時俺の中で何かが弾けた気がした。

あぁそうだ、なんで彼女の事を忘れていたんだ。

いつもは画面の向こうで、なんで目の前にいるのかわからないけど、

俺はそこにいるのを確かめるように呟いた

「………………フラン…?」

「!?………やっぱりアナタも知っていたんだね…」

 


あぁ、やっぱり彼女はフランドール・スカーレットだったんだ

こんな形でも会えたことを嬉しく思うのはそれだけ恋焦がれていたからだろうか。

フランドールもまた一瞬驚いた顔をした後涙を拭った後微笑み返してきた

ところで俺も知っていたってどういう事だ?

 


「オイオイ、せめてもの手向けにアイツと同じ死に場所にしてやったってェのに…死んでねェのは流石吸血鬼のタフさって所かァ」

 


頭上から声が響く、この何かを降らしている奴だろうか

声がしたと思えば降り注いでた何かは止んでいた。

 


「…よく聞いて、これからアナタが向かう世界は多分みんなアナタの事を知らない、そして世界がこうなったのも知らない、あと、世界の調停者に気をつけて」

「は?え、あちょっとえなにこれ」

急に真剣になったフランドールに返す言葉を言うまもなく、

俺は青黒い穴に沼にはまったように少しずつ落ちていった。

 


「待って!なんでこうなってるの!?それに俺はまだ君にちゃんと…」

「それは次に会う私に言ってあげて…多分何も知らないだろうけど…」

 


次第に全身が埋まってきた。待ってくれ本当にまだ何も言えてないんだ。

 


「フラン!!」

「最期に…名前を呼んでくれて、ありがとう、ライー…いえ、ーーー」

 

 

 

最後に見えたのは血染めの仮面を被った誰かに刺されながらこちらに微笑み返す彼女の姿だった。

彼女の声は途中から聞こえなくなった

 

 

 

気がつけば俺は森の中にある大木の側に座っていた。

「………」

手には彼女が、フランドールが渡してくれた『御守り』があった。

 

 

 

「………しょう……くしょう…ちくしょうちくしょう畜生!!」

 


怪我もしてない、血も出てない。痛みもない。

ただ、心は酷く傷ついていた。

 


「なんなんだ…なんだってんだよ…」

 


大木に寄りかかりながら悔し涙を流す

いきなり知らない場所にいて、襲われて、守られて、

恋焦がれた存在が目の前にいて、

何もできずにいた自分に余計に腹が立って仕方なかった。

 


次第に疲れて地面に寝っ転がった俺は、

晴れやかな青空が紅い空に変わるのを見て飛び起きる。

 


周囲を見渡せば羽根の生えた少女たちが飛び回ってるのが遠目に見えると

俺はココがどういう場所かなんとなく察してしまった

 


「………マジかよ、もしかしてここ幻想郷?」